ロボットやAIは、これからの社会を豊かで便利にするものとして、さまざまな場所で研究開発が進められています。大学で学んだ知識と技術を結集させ、AIを搭載した生活支援ロボットの開発に取り組んでいるのが、理工学部・崔龍雲(チェ・ヨンウン)研究室のTeam SOBITS(チーム・ソビッツ)です。
学生たちが開発したロボットである「SOBIT EDU(ソビット・エデュ)」「SOBIT MINI(ソビット・ミニ)」「SOBIT PRO(ソビット・プロ)」は、昨年の「RoboCup Asia-Pacific 2021 Aichi Japan」の2つのリーグで優勝。今年の「RoboCup Japan Open」では、最難関の「Open Platform League(OPL)」で念願の初優勝を果たしました。今回の創大Daysでは、Team SOBITSのリーダーとしてチームを牽引した池田さんに、ロボット開発や研究への熱い思い、仲間との絆、学生生活の思い出などについて語っていただきました。
学生たちが開発したロボットである「SOBIT EDU(ソビット・エデュ)」「SOBIT MINI(ソビット・ミニ)」「SOBIT PRO(ソビット・プロ)」は、昨年の「RoboCup Asia-Pacific 2021 Aichi Japan」の2つのリーグで優勝。今年の「RoboCup Japan Open」では、最難関の「Open Platform League(OPL)」で念願の初優勝を果たしました。今回の創大Daysでは、Team SOBITSのリーダーとしてチームを牽引した池田さんに、ロボット開発や研究への熱い思い、仲間との絆、学生生活の思い出などについて語っていただきました。
「RoboCup Asia-Pacific 2021 Aichi Japan」「RoboCup Japan Open2021」での好成績おめでとうございます。RoboCupとは、どのようなことを競う大会なのでしょうか?
RoboCupは、自律移動型ロボットの性能を競う競技会です。Soccer、Rescue、@Homeなどの部門があり、各部門はいくつかのリーグに分かれています。創価大学のTeam SOBITSは、2011年から生活環境の中で人の暮らしに役立つ作業遂行能力を競う@Home 部門に挑戦しています。
@Home部門では、生活環境を模した競技会場内にて、床や机の上にランダムに置かれたさまざまな形の物を、指定された場所に片付ける「Tidy Up(タイディアップ)」タスクや、レストランで客のオーダーを受け、注文通りの料理をキッチンからテーブルに運ぶ「Restaurant(レストラン)」タスクといった、人々の生活支援を目的とした競技でスピードや正確性を競います。
@Home部門では、生活環境を模した競技会場内にて、床や机の上にランダムに置かれたさまざまな形の物を、指定された場所に片付ける「Tidy Up(タイディアップ)」タスクや、レストランで客のオーダーを受け、注文通りの料理をキッチンからテーブルに運ぶ「Restaurant(レストラン)」タスクといった、人々の生活支援を目的とした競技でスピードや正確性を競います。
ロボットは競技のスタートと同時に周囲の環境をセンサーやカメラで把握し、障害物を避けて物をつかんだりドアを開けたりといったタスクをこなさなければなりません。画像認識、音声認識・対話、自律移動、機械制御などさまざまな知見と技術を統合してロボットを作るため、高い技術力が求められる大会です。
Team SOBITSが開発したロボットSOBIT PROについて教えてください。
Team SOBITSは、崔研究室のメンバーによるロボット研究開発チームで、RoboCupに出場するAI搭載ロボットの開発を通じた研究活動を行っています。過去にSOBIT EDUとSOBIT MINIの2台のロボットを開発し、3台目に当たるSOBIT PROはロボット本体の向きを変えずに全方向に移動できる機動力の高さと、50㎝ほどある長いロボットアームで広い範囲の物を操作できる点が特長です。特に全方向への移動は大きな特徴で、Team SOBITS として初めて移動機構の開発から取り組んで完成させました。
池田さんはいつ、どんなきっかけでロボット研究に興味を持ったのですか?
小学3年生の理科の授業がきっかけです。豆電球やモーターを使って簡単なロボットの工作をしたのですが、うまく動かせた時にすごく感動したんですよね。何もないところから道具を作り、文明を発展させてきた人間の力の素晴らしさを感じて、自分も科学技術をもっと学んでいきたいと思うようになりました。
とはいえ、中学高校時代は漠然と「大学の研究室に行かないとロボット開発はできない」と思い込んでいて、具体的にロボットの勉強をしていたわけではありません。そんな私の転機になったのが、本学の崔先生との出会いでした。その時、私は高校卒業間近で、進路を迷っている時期でした。先輩の紹介で崔先生にお会いしたのですが、それまで「ロボット開発が夢」と言いながら何も行動を起こしてこなかった私に、先生は「調べればいくらでも自分で勉強できるんだよ。つべこべ言わずにやってみろ」「ロボットがやりたいなら1年生から崔研究室においで。面倒を見るから」と言ってくださいました。実はその時まで別の大学に進学するつもりだったのですが、崔先生の厳しくも愛情のある言葉で気持ちが一気に変わり、創大への入学を決めたんです。
とはいえ、中学高校時代は漠然と「大学の研究室に行かないとロボット開発はできない」と思い込んでいて、具体的にロボットの勉強をしていたわけではありません。そんな私の転機になったのが、本学の崔先生との出会いでした。その時、私は高校卒業間近で、進路を迷っている時期でした。先輩の紹介で崔先生にお会いしたのですが、それまで「ロボット開発が夢」と言いながら何も行動を起こしてこなかった私に、先生は「調べればいくらでも自分で勉強できるんだよ。つべこべ言わずにやってみろ」「ロボットがやりたいなら1年生から崔研究室においで。面倒を見るから」と言ってくださいました。実はその時まで別の大学に進学するつもりだったのですが、崔先生の厳しくも愛情のある言葉で気持ちが一気に変わり、創大への入学を決めたんです。
入学後はすぐロボット開発に取り組まれたのでしょうか?
はい。情報システム工学科は3年生から研究室に所属するのですが、私は1年生から崔研究室にうかがい、Team SOBITSに加えていただきました。ちょうどそのころ、Team SOBITSでは、リーダーの久郷紀之さんを中心にSOBIT EDUとSOBIT MINIを開発中でした。久郷さんに教わりながらロボット開発を一から経験できたのは、本当に幸運だったと思います。
久郷さんが卒業し、私が3年生になった時、RoboCupの@Home部門で最もレベルの高いOPLでの優勝を目標に掲げ、新たにSOBIT PROの開発を始めました。それまでほかのリーグでは優勝も経験し、実績を積んでいた私たちですが、OPLは難度の高さがワンランク上。ノウハウのないなか、一からの試行錯誤をひたすら繰り返す毎日でした。
久郷さんが卒業し、私が3年生になった時、RoboCupの@Home部門で最もレベルの高いOPLでの優勝を目標に掲げ、新たにSOBIT PROの開発を始めました。それまでほかのリーグでは優勝も経験し、実績を積んでいた私たちですが、OPLは難度の高さがワンランク上。ノウハウのないなか、一からの試行錯誤をひたすら繰り返す毎日でした。
そんな中、池田さんはチームリーダーとしてどんなことを大切にされていましたか?
チームが団結するために、常に自らが先陣を切って行動することを心掛けていました。OPL優勝は本当に大きな目標で、当初は「本当にできるの?」と半信半疑のメンバーもいました。しかし、私が率先して行動していく中で、開発が少しずつ動き出すと、みんながどんどん前向きになり始め、最後にはチームが団結して力を結集し、掲げた優勝という大目標を達成することができました。一人で叶えられる夢の大きさには限りがあります。大きな夢や目標を叶える唯一の方法は、仲間と団結すること。Team SOBITSでの経験を通して、心からそう実感しました。
池田さんが個人で取り組まれている研究テーマを教えてください。
強化学習AIを用いて、人が正解を教えることなく物体の輪郭を検出する手法を研究しています。この研究の特徴は、人間の視覚を用いた空間知覚の仕組みから発想を得て、静止している物体に対してカメラを動かし、画像の変化の差から物体の輪郭を抽出する点です。一般的な画像認識AIは、学習するために人間が正解を与えていますが、正解を教えるのには膨大な時間と労力がかかる上、学習していない物体の予測をすることができません。私が開発した手法では、試行錯誤によって学習する強化学習AIが、輪郭を抽出するのに最適なカメラの動きを実現することで、人が正解を与えることなく物体を検出することができます。未知の空間で作業をすることが求められる生活支援ロボットなどには欠かせない技術だと考えています。
また、修士1年の時に、AIを搭載した自律型2脚2輪倒立ロボットのSOBY(ソビー)を開発しました。複雑なタスクがこなせるSOBIT PROとは異なり、SOBYは特にタスクができるわけではありません。ちょこまかと動き回る、かわいらしいペットのようなロボットなんです。「何かしてくれるわけではないけど、そばにいたらかわいい」。それもまた人間に寄り添い支えるロボットの形だと思い、見た目のかわいらしさにもこだわって作りました。
また、修士1年の時に、AIを搭載した自律型2脚2輪倒立ロボットのSOBY(ソビー)を開発しました。複雑なタスクがこなせるSOBIT PROとは異なり、SOBYは特にタスクができるわけではありません。ちょこまかと動き回る、かわいらしいペットのようなロボットなんです。「何かしてくれるわけではないけど、そばにいたらかわいい」。それもまた人間に寄り添い支えるロボットの形だと思い、見た目のかわいらしさにもこだわって作りました。
研究室の活動とは別に、個人でもロボットを開発されたのはすごいですね。RoboCupなどのロボット開発に打ち込むモチベーションはどこから生まれているのでしょう?
自分が大好きな創大の魅力を、技術力を通して広くみなさんに知ってほしいという思いは強いです。私が初めてRoboCupに出場した2018年、Team SOBITSは初心者チームが出場するリーグで初優勝しました。学外の方からもたくさん称賛の言葉をいただいたのですが、みなさんが大学の知名度や過去の実績とは関係なく、純粋に私たちの技術力を評価して「創価大学すごいね」と言ってくださいました。そのことに感激し、技術力で大学に貢献したいと考えたことがOPLへの挑戦にもつながっています。
どんなことがきっかけで大学が「大好き」になったのですか?
尊敬できる先生方や先輩、何よりたくさんの友人との出会いが大きいですね。私がつらい時には、自分のことを二の次にしてでも駆けつけてくれる友人たちに恵まれて、大学生活には嫌な思い出が一つもないんです。所属していたラテンアメリカ研究会では部長を務め、他学部の友人が増えましたし、たくさんの人を巻き込んで活動する力も付けることができました。研究室の同期とは、毎週ミーティングで考えていることを率直に語り合い、本当に何でも話せる最高の間柄になれたと思います。研究での議論や論文の添削会はもちろんのこと、就職活動などでもエントリーシートの添削会やTOEICの勉強会を開いて、同期のメンバーと切磋琢磨して力を磨いてきました。これらすべての創価大学で過ごした日々は、私の人生の原点として、一生輝き続ける宝物です。
大学生活を通して、ご自身のどんなところが成長されたと思いますか?
学びの面ではロボット開発の技術であり、精神面では自分が率先して周囲を引っぱり、新しいことに挑戦する心意気を養えたことだと思います。高校時代の私は、大学に行きさえすれば、大学の環境が自分を技術者として育ててくれると思っていました。だから、一流の技術者になるには名門大学に行かなくてはいけない、と。でもそんなことはありませんでした。この大学で、環境もロボットも、自分で行動して作り上げていくことが大切だと学ぶことができました。崔先生に背中を押していただき、挑戦し、目標を達成し、仲間と一緒に成長できたという体験は、今後の人生の大きな力になると思っています。
これからの抱負と後輩のみなさんへメッセージをお願いします。
大学院修了後は、JAXA(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)で宇宙ロボットの研究開発に携わる予定です。宇宙ロボットと聞くとなんだか日常からかけ離れた研究のようですが、実は宇宙開発から生まれた技術は、私たちの社会のあらゆる場所で活用され、生活を支えています。宇宙開発の発展に貢献することはもちろん、これら技術を応用することで人々の負担を減らし、人の新しい可能性を広げるようなロボットやAI、科学技術の開発もめざしていきたいと考えています。
大学は、社会に出る前に「自分はこれで生きていくんだ」という人生の基盤を作る場所です。創大は、学生がみんな真面目で誠実で、それぞれの目標に向かって頑張っています。勉強する上でも、自分を成長させる上でも、とても良い環境です。自分の基盤を作るために、後輩のみなさんにはぜひ創大で学び、いろいろなことに挑戦してほしいと思います。
大学は、社会に出る前に「自分はこれで生きていくんだ」という人生の基盤を作る場所です。創大は、学生がみんな真面目で誠実で、それぞれの目標に向かって頑張っています。勉強する上でも、自分を成長させる上でも、とても良い環境です。自分の基盤を作るために、後輩のみなさんにはぜひ創大で学び、いろいろなことに挑戦してほしいと思います。
PROFILE
池田 勇輝 Ikeda Yuki
[好きな言葉]
英知を磨くは何のため 君よそれを忘るるな
[性格]かしこいルフィ(漫画ONE PIECE) 研究室の友人より
[趣味]
テニス、映画鑑賞
[好きな映画]
STAR WARS
ページ公開日:2022年06月23日