英国・ケンブリッジ大学/ケム川のほとりで 宮﨑 淳 教授

英国・ケンブリッジ大学/ケム川のほとりで 宮﨑 淳 教授

2003年4月から翌年3月までの一年間、在外研究の期間をいただき、英国・ケンブリッジ大学不動産経済学部にて研鑚させていただきました。ケンブリッジは、ロンドンから北へ電車で約50分のところに位置し、のどかなイングランド中東部の田舎にある大学の町です。ケンブリッジ市内から車で10分ほど郊外に走ると、春には菜の花畑が一面に広がり、野ウサギが群れをなして遊んでいるのに出会います。

ケンブリッジ大学の特徴は、ケム川沿いに点在する多数のコレッジ(学寮)から構成されているということです。各コレッジは、学問的にも財政的にも独立した組織で、それぞれが各分野の研究者および各学部の学生を抱え、学生と教員はコレッジという共同体の中で寝食をともにしています。つまり、コレッジはそれ自体で小規模な総合大学のような実態を有しているといえます。それでは学部はどういう存在かというと、学部も大学教育および研究を行う独立した組織ですが、学部に対する帰属意識は、コレッジに対するものより強くはありません。このように、コレッジおよび学部は、学生や教員を共有しながらも相互に独立した存在であり、それらの連合体が観念的にケンブリッジ大学と呼ばれているのです。

ケンブリッジ大学の学部図書館では、熱心に勉強する学生たちが多く見受けられます。学期中の図書館は、ほぼ満席に近い状態です。多くの学生は、講義の準備やスーパービジョンの課題に追われています。スーパービジョンとは、ある科目を履修すると、週2回の講義と並行して、少人数のグループ単位で指導を受ける機会を提供するものです。その中身は、課題レポートが出され、それに対する具体的な指導を受けたり、講義の内容について一対一で確認または補完されたりと細やかな指導がなされる場合が多いようです。学生に聞くと、このスーパービジョンの準備が大変で、手が抜けないと異口同音に語っていました。

300人程の学生が受講する「不法行為法」(法学部)の講義では、数名の教員が教壇に立ちます。自分が専門とする領域を2コマ講述したあとに、次の領域を専門とする教員が4コマ講義するというようなオムニバス式の授業です。この科目には、スーパービジョンの担当教員は、10名置かれていました。また、十数名の学生が受講する「私法」(不動産経済学部)の授業では、講義とスーパービジョンを一人の教員が担当しています。このような少人数の講義では、学生の側からも頻繁に質問が出され、そこでの教員とのやりとりをみる限り、スーパービジョンがうまく機能しているように思われました。講義の形式は一対多数ですが、講義以外の見えない部分の教育がそれを下支えして、実質的には一対一の授業に近い形の教育がなされているように感じました。

コレッジには学生生活全般にわたって指導を受けるチュートリアルという制度があります。学部の授業におけるスーパービジョン、コレッジにおけるチュートリアルというように、学生は幾重にも教員から個人的に指導を受ける機会が制度上用意されており、このようなシステムは大学教育の効果をあげるうえで大きな役割を担っています。コレッジでは、週に1回フォーマル・ディナーが開催され、コレッジに所属する教員や学生を中心に豊かな人間関係を築く場になっています。ケンブリッジ大学には世界各国から研究者が集まってくるため、コレッジのディナーは世界の縮図といっても過言ではありません。ある日、招待していただいたディナーで私の隣に座った方は、オーストラリアの著名な経済学者でした。彼のファミリーも交えての楽しい会話と、時よりテーブルの端から聞こえてくるこむずかしい話に相槌を打ちながら、フォーマル・ディナーの雰囲気を十分に堪能しました。大学の生活を形容する言葉として、コレッジ・ライフという用語が使われますが、その一端を垣間見たような気がしました。

学生たちと一緒に授業を受けたり、セミナーや講演会に参加したり、手入れが行き届いた中庭で読書をしたり、またケム川のほとりを散歩しながら思索したりと、ゆったりとした時の流れの中に身を置き、研究生活を送れたことは、かけがえのない貴重な経験となりました。この一年間に修練したことを、今後の研究および教育に反映させていけるよう、さらなる努力を積み重ねてまいります。

最後に、英国でお世話になった諸先生方および在外研究の機会を与えて下さった本学の関係者各位に対して、心より御礼申し上げます。
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